大企業ではイノベーションを起こす事が1つの大きなテーマとなっています。では、デザイナーにとっての役割はどのように変化していくのでしょうか?
イノベーションとは新結合という意味があると言ったのは、シューペンターですが、異なる要素を結合させる役割を担うのがデザイナーの役割になると考えています。
デザイナーの得意な事といえば、目に見えない考えや概念を視覚化していくことです。新規のプロジェクトにデザイナーが加わると、プロジェクトのイメージが湧きやすく、共通イメージを持ちやすくなります。
言葉だけでなくビジュアルイラストや図解を提示できる事でコアとなるコンセプト部分、ビジネスモデルに常に焦点を合わせながら、社内外のコミュニケーションを円滑にして、事業企画をブラッシュアップしていくことが可能になります。
これから21世紀にデザイナーとしての役割は大きく変わっていくと予想できます。グラフィックデザイナーやプロダクトデザイナーという職種自体もう既に古く、イノベーションデザイナーである事がひとつの指標になってきます。社会に本質的な価値を見出して、その価値を社会に届けられるデザイナーになる事が使命になってきます。
■NOSIGHNER 太刀川氏
NOSIGNERの太刀川さんがソーシャルイノベーションデザイナーとして活躍されています。以前書評もブログにアップした「デザインと革新」は、太刀川さんのデザインの考え方が詰まった書籍になっています。太刀川さんは、ソーシャルイノベーションを推進する仲間と共に同じような志を持った人が一人でも増えて、社会がより良い方向に向いていく事が重要だという事を仰っています。利益偏重主義の企業に属するインハウスデザイナーも、ソーシャルイントレプレナーとして、社会課題と自社のビジネスモデルを結びつけ、事業企画立案スキルが求められてくると考えていますが、早くも数多く実践を積み重ねている太刀川さんから学ぶ事はとてもたくさんあります。僕も早く仲間入り出来るようなステージに上がりたいと考えています。
■支えることからのデザイン_山崎亮氏
コミュニティーデザイナーの山崎亮さんの著書「コミュニティデザイン イギリス編」がとても面白い書籍です。studio_Lで活動している考え方と、100年前のイギリスのコミュニティや働き方などの思想背景とがリンクしていて、山崎さんがこれからのコミュニティーをどのような生態系にしていきたいのかを垣間見ることが出来ます。一般の方が自ら考えて企画し、行動する。そのサポートをするのがコミュニティーデザイナーの仕事だと主張されています。押し付けはよくないということですね。つまり、デザイナーはファシリテーションスキルも重要になってくるということです。プロジェクトマネジメント、プロジェクトファシリテーション、プロジェクトビジュアライズなど、プロジェクトのデザイン自体を統括プロデュースしていく事が、これからのデザイナーに求められるスキルになってきそうです。
■バイアス崩しから始まる発想_濱口秀司氏
ビジネスモデルデザイナー濱口秀司さんはフラッシュメモリなどで有名な戦略家です。濱口さんは目の前にある事象や、インハウスデザイナーなどが考えるアイディアには、一定のバイアスがかかっていると解きます。固定観念ですね。企業内の常識や、アイディア発想段階の常識、デザイン展開の常識。そういったものを一旦取り外すことをバイアスを外すという言葉で説明されています。イノベーションを産むには、常識を覆すような革新的なアイディアであったり、概念、観念が必要になってきます。一般的な市場リサーチやマーケティングに頼りすぎると、イノベーションを産むようなアイディアには発展しきれない事になります。発想はプロジェクト開始段階からすぐにでも初めて、情報量が多くない段階が勝負所だそうです。確かに長期に渡ってアイディアを考えていると、そもそも初期の頃に疑問に思った事や、些細な違和感がヒントになっていることも私自身良く経験しています。
■パラレルに複数プロジェクトを動かす_佐藤オオキ氏
ある一定の制約の中で自分の内側に眼を向けて、アイディアを深堀していき、脈がありそうなものはすぐにプロトタイプを作って、実証実験を行うというスタイルがイノベーションには欠かせない気がします。プロトタイプは簡単な模型であったり、3Dプリンターでモックを作ったり、外観のイメージや造形美はモデリングによって検証を行う等です。素早くサイクルを回して、7〜8割の完成度でも、とにかくモデルで検証するというスタイルで年間250件ものプロジェクトを動かしているのが、佐藤オオキさんです。佐藤さんは等身大でクライアントのヒアリングと思い浮かんだアイディア重視して、プロトタイプで思いついたアイディアをすぐに視覚化していく事に注力しています。イメージを素早くモノにして、共有するということはイノベーションに欠かせないプロセスの内の一つです。
では、自分には何が出来るのだろうか?
ご活躍されているデザイナーさんと比較すると足がすくんでしまいそうになります。「社会を変える」という大義名分を掲げてやっていけるのだろうか?といつも路頭に迷うTakebonです。確固たる哲学があるわけでもなく、ずっと同じ会社に所属して、インハウスとして、下請け業務でYesマンにならざるを得ないデザイナーってどうなんでしょう?モンモンとして、閉塞感にうちのめされそうになって、本当に意義のあるようなプロジェクトを進めたくても、物理的な時間、場所的な制約から、なかなか手を出せない。こんな状況をなんとか打破したい。そんな想いから、まずはイノベーティブな事をしているデザイナーの方々を知るところから始めました。
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